心にしみいるメッセージ

-たばこのパッケージに新提案-


私、たばこはこの2年ほどやめていたのですが、本業が忙しくなったのを機に3月頃から「この不衛生な習慣」をまた始めてしまいました。
そうしたら6月頃になって、たばこのパッケージに、素敵なメッセージが掲載されるようになりました。 新しいたばこを買うたびに、新しいメッセージが載っています。
今日は、哀れな中毒患者に贈られたJTのメッセージを味わって見ることにします。

まず、代表的なのはこれです。

その通りですね。よく存じあげています。
しかし、この私が肺がんになる確率がもともと0.5%だったとして、それが2%になるというのは、統計学的・疫学的にこういう風に書いてしまうとそのインパクトを弱める気がします。
ハインラインのSF小説には「語義学者を呼んで分析させようか?」というフレーズが時々出てきますが、日本語の表現のあいまいさにつけ込んで、ハッキリ言うべきことを曇らせている表現もあるのです。
この場合も言うべき内容はハッキリしています。表現も正確です。しかし、どんなに大きく書いても心にしみわたらない言い方というのを心得た表現と言えましょう。

「肺がんの原因の一つとなります。」
他の原因もいろいろあるんだから、たばこぐらいしょうがないじゃん。

「肺がんになる危険性は4倍になります。」
99.5%だいじょうぶ、が98%だいじょうぶになるんでしょう。
と、そういうツッコミを可能にしているのは、お役所仕事である以上致し方のない部分でしょう。
パッケージの前面には、これと同様の記述が配置されています。数えてみれば4種あります。




はいはい、存じ上げております。
危険性が高まるって、倍にもなっていないじゃん。
という逃げ道が見えるんです。
それらの危険性を合計したら、死に至らないかもしれないけど、充分現実味のあるパーセンテージにはなるでしょう。
パッケージの前面にはこういう病気の可能性を告知するメッセージが配置されています。

これに対して、背面のメッセージはちょっとその性質が違います。


これは前面に見られるメッセージの続きといえば続きです。
女性の喫煙者も増えているようです、いや、男性の喫煙者が減少している中ではむしろその率は増えているでしょう。
その女性喫煙者の中で、このメッセージを見てたばこを止める人がいるのでしょうか。


やっと、「吸ってはいけません。」とハッキリ言ってくださいました。


ごもっともです。副流煙の害は、緩やかな傷害、周りの人が一定確率で病気になるというロシアンルーレット式の暴力です。
それを「迷惑」という言葉でくくってしまっているのは実情に比べると限りなくマイルドな表現であると言えるでしょう。


このメッセージは、哀れな中毒患者の胸に深くささりました。

他の7つのメッセージが真実であることを理解していながらも、それでも煙草がやめられないのは「喫煙への依存」に他なりません。
文章が短い分、このメッセージだけひときわ大きい文字で印刷されているんですよね。これが。

JTのホームページを訪問してみれば、「社会情勢によりこれらのメッセージを印刷させられてはいるが、これらのデータは一面的な見方であって、タバコは実はそれほどの害はないかも知れない。自分の意志によってやめられる人もいるし、人ががんなどの病気になるのはタバコのせいばかりではない。」(超意訳)という主張が述べられています。

実はこれらのメッセージは世界条約(たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約)の取り決めにより、法律(たばこ事業法及び同法施行規則) でパッケージに印刷されるよう定められたものです。
条約の内容や、外国でのたばこをめぐる対応を見ると、日本政府やJTの対応は極めてマイルドなものと言わざるを得ません。
「mild」の表現は、本国製品の健康に及ぼす悪影響が他国製品と比べて小さいことを意味するものではありません。

海外のタバコのパッケージは、気の小さい人には見せられないようながん患者や病気に冒された臓器の写真とともに「たばこはあなたに苦しみに満ちた死をもたらす」とか書いたものがあるようです。
たばこの価格も「それならたばこをやめた。」と思わせるような価格です。
哀れな中毒患者としては、日本政府とJTが、条約を遵守し、たばこを止められるようにより一層の環境整備を願うものです。

さて、お役所が定めたメッセージをしみじみ味わった後は、中毒患者に贈るため、心にしみいるメッセージを創作してみましょうか。
たばこを1日1箱吸う人は、年間約10万円を
役に立たないばかりか有害な煙を製造することに
費やしています。

たばこを1本吸うと、人は人生の数分間を浪費し、
統計的にはそれと同程度寿命を縮めることが知られています。

未成年の喫煙を、見てみぬふりをする人は、
法により処罰されます。

たばこをなかなか止められない人は、上司や同僚や家族に、
自己管理能力のない人間と思われる可能性があります。
きっとそうです。

たばこによって解消されたように見えるストレスの原因は、
吸い終わった後、全くそのままに残っていることをご存知ですか。

たばこの価格は国際条約の取り決めにより
今後も上昇の一途をたどる予定となっています。

こういったメッセージには人はすぐ慣れるものです。 日本人はこんな科学的・統計的に正確な記述よりも、情に訴えるシンプルな事実の方がよほどこたえると思います。
私の夫は、ヘビースモーカーでしたが、3人の子供を残して肺がんで亡くなりました。
たばこが憎くてなりません。○○県34歳主婦

たばこは、自分さえ気をつければいいと思って吸っていましたが、
妻が肺気腫で亡くなり、自分のせいではないかととても後悔しています。○○県48歳会社員

たばこを1日2箱吸っていた私は、肺がんで片方の肺を失い、再発を怖れる毎日です。
私のような目にあう人が少しでも少なくなるよう願っています。○○県55歳無職

世の中にたえてたばこのなかりせば、年1万人は助かるものを

日本人には日本人に有効なクスリというのがあるものです。
たばこに対して恨みや後悔を抱いている人は多いのですから、それらを集約して掲載すれば、その情念に慣れるということはないと思います。
厚生労働省様、禁煙団体様、タバコ被害者団体様、いかがでしょうか?
「なべのさかやき」目次に戻る